長澤 一臣(ながさわ かずおみ)
2008年 松本日産自動車株式会社 代表取締役社長
2020年 松本日産自動車株式会社 代表取締役会長(現任)
2008年 松本日産自動車株式会社 代表取締役社長
2020年 松本日産自動車株式会社 代表取締役会長(現任)
長澤:2011年に社長に就任した時は、取引先様なども含めた全てのステークホルダーに対して我々は優良な存在でありたいということを目標としていました。しかし、よく突き詰めて考えますと、特に誰に対して社長として責任を持つのかと考えた時に、それは社員だと考えるに到ったのです。社員一人ひとりが、会社のためにやってやろう、期待以上のことを発揮してやろう、そう思えるような会社にしたい。期待することや能力以上のことをやってやろうと社員全員が思っている会社って、面白そうでしょ? だから、「お客様の満足は社員の満足から」という企業理念にしました。
私は元々メーカーの営業部署にいたのですが、そこにいた時から営業成績は「能力×活動量×やる気」で決まると思っていたんです。特にその中でも「やる気」というのが他の能力や活動量へも影響する部分が大きいと思っていたので、社長になった時にも、会社の業績向上の為にいかにして社員のやる気を上げていくのかを考えていました。
そのためには、まずは成績を上げた人、会社に貢献した人がきちんと報われることが大事だと考えていました。そこで報酬、特に賞与においては頑張った人がきちんと報われるようなメリハリある仕組みに変更したり、それに伴って評価制度を見直したりしました。仕事の成果に応じた評価制度に整えることが社員の納得と満足に繋がると信じています。
2009年 日産プリンス大分販売株式会社 代表取締役社長
2014年 日産プリンス福岡販売株式会社 代表取締役社長
2020年 松本日産自動車株式会社 代表取締役社長(現任)
平井:松本日産に来る前の別の会社にいた時に、実は松本日産に来たことがありました。なぜ松本日産のES(社員満足度)が高いのかを探ることが目的でした。その時にまず感じたのは、社員に対する愛情のある会社だということでした。そして実際に松本日産に社長として就任後も、社員一人ひとりが明るく、素直で純粋だと感じました。先ほど賞与に差をつけていると言う話が出て、もしかするとすごく成果主義的に聞こえたかもしれません。しかし、実際のところ松本日産は、平均年収でみると全体的に高いのです。ですから、最下位でも世の中のだいたい平均程度になる感じです。つまり、メリハリとは言っていますが、それは会社が成長した分について、頑張った社員に分配しているという意味なんですね。
大事なことは、達成感や成長実感を社員自身が得られることだと思っています。ですから半期毎に目標を立てて、それを達成するために会社としてサポートしたり、成長実感を得られるように研修や教育の場を増やしたり、資格取得に対するインセンティブの支給などを行っています。特にサービスなど整備の領域では1級、2級と資格があって、よくあるパターンは資格を取った時に報奨金を支給する形だと思うのですが、松本日産では資格を取った方には資格手当を毎月支給し続ける仕組みにしています。松本日産では、こういった仕組みを通じて、社員が自ら成長や目標達成に取り組んでもらえるように、会社としてもサポートをしています。
長澤:成果を追うスタイルも行き過ぎると会社への貢献度にしたがってパワハラ問題やメンタルに問題を抱える社員が増えてしまうという弊害が起こりがちです。「社員を大切にする会社、社員の満足を企業理念に掲げている」松本日産としてこのような状況はよくないし、どうすればこの弊害を取り除くことができるだろうと考えています。公正な評価制度や働く環境の整備など多くのことに取り組んでいますが、社員の仕事に対する「やる気」こそが会社の業績向上にとって何より大切であると信じ、社員が働きやすく満足できる職場環境を目指して今後とも継続して取り組んでいきます。
時短勤務などの多様な働き方、女性活躍の促進、残業時間の低減、福利厚生の充実など、色々とやらなくてはいけないことがまだまだあると感じています。ですので、社員のやる気や成果に繋がることは全てやっていきたいと思っています。例えば、尊敬できる先輩がいるとかそういう人と人との深い関係づくりという点も含めてやっていきたいと考えています。
平井:社員の成長を支援するという観点でも、教育や研修、仕事だけではなく人間性を高められるようなこと、そして社員一人ひとりがやりたい仕事に挑戦できるような仕組みなども検討しています。最近ではメンバーシップ型やジョブ型という考え方がよく語られますが、ディーラーという業界は、これまで営業が中心のジョブ型に近いところがあったように感じています。ですから我々としては営業だけではなく、社員一人ひとりが得意分野を見つけ、その道のプロフェッショナルとなり会社としての総合力を高めていきたいと考えますし、そういった多様な人が活躍できる会社にしていきたいと思っています。
長澤:確かに営業でいうと今までは個の能力に頼っていたところが大きく、いわゆる属人的な営業活動が中心でしたが、これからは仕事を分解、分析して属人的になっているものをより分業的な仕事のやり方に変えていく必要があると思っています。その中で社員一人ひとりの個性が活かされ、会社全体の成果に繋げていくというのはとても重要なことだと思います。
松本日産では現場で起こっていることを観察して自分で課題を設定したら、それをどのように解決するかを考える文化があります。また、それは一人で行なうのではなく課題設定がされたらミーティングを開き、課題をみんなに共有し解決に向けてみんなで取り組むというマインドもあるんです。そういった文化や共通のマインドみたいなものも、社員一人ひとりのやりがいに繋がっているのではないかと思っています。やはり人の役に立つ仕事をするというのが単純だけどやりがいの観点では大事だと捉えていますね。
長澤:赤字にならない会社であり続けられた理由は、一言でいうと「販売力とお客様を大切にする」ことを継続してきたことの現れだと思います。私が松本日産に来る前の話になりますが、昭和50年代で既に松本日産は日産グループの社長賞を毎年とっていたし、そのうち半分は全国1位といった状態だったのです。当時は営業力も高く、お客様との強い信頼関係と顧客基盤がありました。それが当時の安定した成長の要因になっていたのだと思います。
その後、環境規制やバブルなどもあり売上が上がらなくなってきました。その時に当時メーカーの営業部署にいた私が、松本日産の立て直しのために出向してきたのです。
当時の松本日産はお客様ではなく会長や社長を見て仕事をしていて、指示待ち社員が多くいると感じました。ただ、一時代を築いた優秀な社員は多くいましたし、昔からのお客様も多く残っていたのでやり方次第で業績はすぐに回復できると感じていました。バラバラになっている組織を一つの方向性に統一すれば復活できると思いました。
実際に苦しい経営の中でも愚直にお客様を見て仕事をし、きちんとお客様から対価をいただける仕組みを構築したことで、売上台数も業績も赤字になることはなく成長を続けることができています。
平井:お客様から対価をいただける仕組みというのは、分かりやすく言うと車を売ることがメインであったビジネスモデルを、車を保有することで発生する様々なポイントで価値提供を行い対価をもらえるビジネスモデルへと変革したことになります。例えば、車検や定期的な点検・整備・自動車保険など、お客様との接点を増やすことで収益に繋げていくことに取り組んでいました。こういった変化や取り組みを愚直に行ってきたことが、創業以来赤字になっていない理由だと思っています。
長澤:正直、当時はお客様の保有台数が伸びていた部分があったのでよかったのですが、今は自動車の台数自体が減少してきているので、同じやり方だけでは経営が難しくなってきています。昔は販売力を強みに販売台数を増やすことで売上を伸ばしていましたが、今後は平井社長が言うようにサービスやメンテナンスなどお客様との様々な接点の中で、松本日産としての価値を提供し対価をいただくことが大事になってくると思います。これも繰り返しになりますが、これからは営業だけではなく会社全体の総合力を高めていくことこそが、安定した成長のために必要になるのではないかと考えています。
長澤:自動車は社会的に価値のある商品だと思っています。自動車を通じて人々の生活を豊かにしていくこと、この想いに共感し、一生懸命で誠実に取り組んでくれる人を松本日産は求めています。一生懸命で誠実というのはどの会社でも求められるものだとは思いますが、やはり私としてはこういう人に来てもらいたいと思っています。
また近年ではMaaSなど、自動車の「所有」から「利用」という動きも出てきていますが、自動車の移動手段としての価値が損なわれることはないと思っています。ですから自動車、モビリティが好きな人、興味のある人にはぜひこれからの変化の時代を一緒に切り拓いていければと思っています。皆さん一人ひとりにとってやりがいのある仕事を提供すること、松本日産はそれをお約束します。
平井:学生の皆さんはそれぞれ信念や志を持っていると思います。それを大切にし、常識に囚われずに行動できる魅力的な方に来てほしいと思っています。
松本日産は雰囲気が非常によい会社だと思っています。ただ裏を返すと少し大人しい社員が多いところもあります。なのでこれから松本日産に入っていただく皆さんには、多少荒削りでも何かに挑戦したいと思っている人、一緒に会社を引っ張っていく、変えていこうという気概を持った人に、ぜひ集まってきてほしいと思っています。
松本日産に入って色々なことに挑戦してほしいですし、その挑戦を私も松本日産という会社も応援させていただきます。